<閲覧注意>



言うまでもありませんが 作中出てくる様々な事柄は ちゃらんぽらんな青林が
あちらこちらで聞きかじったことを いい加減にアレンジして書いたものです。
時代考証も地域柄もな〜んにも考えておりません。ご了承下さい。



「さて、どうするかな?」
オスカルにはああ言ったものの リングピローなど当然アンドレは作ったことがない。
けれど 結婚式でリングを運ぶ役のリングベアラーならやったことがある。
ジャルジェ家の使用人同士の結婚式で頼まれたのだ。凄く嬉しかったけれど緊張もした。

故郷で聖歌隊をしていたアンドレは 幾度となく結婚式に参加した。

その時リングベアラーをする男の子を何度か見たが まさか自分がやるとは思わなかった。
アンドレには年頃の女の子の親戚がいなかったからだ。
普通 この役目は新婦の親族の中から選ばれる。もしいなければ 無理に用意しなくてもいい役なのだ。

それなのにジャルジェ家の使用人仲間のジョンは 
自分の結婚式のリングベアラーをアンドレにまかせてくれた。
「アンドレはおれ達にとって 家族みたいなもんだからな。」
そう言ってくれた。アンドレはジョンを兄のように慕っていたからとても嬉しかった。

当日 晴れ着を着て バージンロードを歩くとみんなが自分を見た。みんなにこにこしていた。
アンドレも笑おうとしたけれど 緊張して顔が強張ってしまった。
式が終わるとみんながアンドレを褒めてくれた。
「かっこ良かったぞ。」
「きちんとできて 偉かったわね。」
ぐりぐり頭を撫でたり 抱きしめたりしてくれた。新婦のアンナが頬にキスしてくれた時は皆が拍手をした。アンドレはこの時、このお屋敷の一員に みんなの家族になれたと心から思えた。

アンドレはこの思い出の役を 自分の結婚式でも取り入れたいと思っていた。頼む相手も決めてあった。その子もまた、自分達夫婦の親族ではないが 親族になったかもしれない子だ。

アンドレは裁縫係や洗濯係の作業場に顔を出した。
「ちょっと おじゃまするよ。」
「アンドレ 来ると思って用意していたよ。」
この部屋の主とも言うべきナタリーおばさんが いつもの豪快な笑みを浮かべてアンドレを迎え入れた。
「あんたも大変だね。まぁっ 自業自得か。あんたがお嬢さまを甘やかしてきたんだからね。」
がはは・・・と笑いながらアンドレの背を叩いた。
「おばさんたら さっきまで "おお あのチビのアンドレが・・・" って泣いてたくせに。」
居合わせた小間使い達が言うと
「よけいなこと言うんじゃないよ。ほらほら 手がお留守だよ。」
ナタリーおばさんはちょっと怒った風に言った。けれど 小間使い達はケラケラ笑っていた。
おばさんはコホンと咳払いして そそくさ戸棚から綺麗な光沢のある生地を出してきた。

「極上のシルクさね。奥様のドレスの余りだが リングピローを作るには十分な量があるよ。」
「へー」
アンドレが触ろうとすると ペシンと手を叩かれた。
「汚い手で触るんじゃないよ。純白のサテンさ。まずは手を洗っといで」
「はいはい」
アンドレは手を洗いに行った。昔からナタリーおばさんには叱られてばかりだ。
けれど何故だかおばさんのガミガミ声は聞いてると嬉しくなるのだ。
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