教会の席に列席者が座り終えると祭壇の前に司祭が現れた。やや離れてアンドレとベルナールが並ぶ。
聖堂の入口に緊張した顔のモーリスが新郎と同じ衣裳を着て現れ 
バージンロードをリングピローを掲げて進む。アンドレがそれを受け取り脇に置く。

大役を終えたモーリスにアンドレは
「カッコ良かったぞ」
と声をかけて頭を撫でてやる。にっこりはにかむ姿が可愛い。
モーリスが着席すると素早くベルナールが指輪を本物とすり替える。
子供に高価な物を持たせてはいけないと言う教えがあるからだ。

"さすが もと黒い騎士"

列席者の誰にも気づかれずすり替えた。横にいたアンドレでさえ いつ替えたのか分からなかった。
別にみんな分かっていることなので そこまで徹底することはないのだが。

そして 新婦が教会の入り口に現れる。純白のサテンのドレスはサラサラ流れ 
ベールに隠されていても新婦の美しさは伺い知れる。
手にした白ばらのブーケとお揃いのばらがアンドレの胸にも付けられている。

透けるベールの下から 真っ直ぐに祭壇の横に立つアンドレを見つめ
バージンロードをオスカルは歩き始めた。アンドレも花嫁を迎えるべく歩を進める。
アンドレはバージンロードの中ほどでオスカルを待ち その手を取り祭壇に導く。

聖歌が歌われ 司祭が開祭を宣言し アンドレとオスカルに祝福を与える。
祈りが捧げられ 聖書の朗読が行われる。

そして司祭はアンドレに問いかける。
「アンドレ 汝はオスカルを妻としますか?」
「はい、いたします。」
司祭は軽くうなずくと今度はオスカルに問いかける。
「オスカル 汝はアンドレを夫としますか?」
「はい、いたします。」
「それでは 一緒に誓いを立てなさい。」
オスカルとアンドレは互いに手を取り合い 神の御前に誓いを立てる。

「わたしたちは夫婦として、順境にあっても逆境にあっても、病気の時も健康の時も、
生涯、互いに愛と忠実を尽くすことを誓います。」

その言葉を聞くと司祭は満足げに微笑み 
固く握り合った二人の手にストラと司祭自身の手を添えて祝福を求める祈りを唱えた。

司祭の祈りが終わるとアンドレはオスカルの手を離し ゆっくりオスカルのベールを持ち上げる。
オスカルはやや腰をかがめ アンドレがベールを後ろに垂らすのを助ける。
ベールに隠れていた白銀のティアラが現れ輝く。
顔を上げた新婦の頬をアンドレはそっと包み込むように手にした。オスカルはゆっくり瞳を閉じる。
アンドレもやや遅れて目を閉じた。唇が重ねられ オスカルの目じりからすぅと涙が流れた。
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