「それからね。あのリングピローはロザリーおねえちゃまにあげたらいいと思うの。
だってあれって 赤ちゃんの枕にぴったりじゃない。」

えっ!?

ル・ルーの言葉にみんなが驚いてロザリーを見たが 一番驚いていたのはロザリーだった。
「本当なのか?ロザリー・・・」
ベルナールがおろおろ声をかける。
「わからないわ。あっでも・・・」
月のものが遅れていることにロザリーは気が付いた。オスカルの結婚式に浮かれていて 忘れていた。
「と・・とにかく 一度医者に診てもらおう。」
ベルナールは嬉しそうにロザリーにそう言った。

「そうか そういうことなら あれはロザリーにやろう。」
オスカルが言うと
「あっ まだ そうだと決まったわけでは・・・」
「ル・ルーの不思議な能力は知っているだろう。けれどはっきり分かったら改めて知らせてほしい。」
「はい オスカルさま」
頬を染めてロザリーは答え モーリスからリングピローを受け取った。
本当はアンドレは自分の子供のために作ったのだが ロザリーが喜んでくれるのならと 笑って見ていた。
「そうですわ。お礼にオスカルさまにお子様が出来ましたら 
わたし お子様に枕を作って差し上げますね。」
「ありがとう ロザリー」
オスカルも嬉しそうに微笑んだ。

「おめでとう ベルナール 休憩を返上して駆け付けたかいがあったよ。」
ロベスピエールがベルナールと握手を交わす。
「あの ジャルジェ君が結婚すると聞いてひとことお祝いを言いたくて 
議会の合間に来てみたが こんなにおめでたが重なるとはね。」
そして今度はオスカルを向いて
「ジャルジェ君 結婚おめでとう。身分を超えたこの婚儀はまさに 
これからのフランスを暗示するかのようだ。」

「ぼくも 君たちを祝福したい。」
サン・ジェストも声をかける。
「今 ぼくはロベスピエール先生のもと 新しいフランスのために働いているんだ。」
嬉しそうに言い添えて
「結婚おめでとうございます。あなたたちの前途に幸多からんことを。」
この美しい顔で言われると まるで本物の天使に祝福されているようだ。
忙しい二人はすぐに議会に戻って行った。あの二人はこれからのフランスを担う大きな柱になるだろう。

「フェルゼン これから我が家で会食をするのだが 来てくれるか?」
オスカルの誘いにフェルゼンは残念そうに答えた。
「ありがとう。だが そろそろ宮殿に帰らねばな。」
「そうか 来てくれてありがとう。会えて嬉しかった。」
「ああ わたしもだ。こんな美しい花嫁を見れていい目の保養になったよ。」

”本当に綺麗になったな オスカル あの時よりずっと・・・ちょっと惜しいことしたかな。
いいや違うか。彼女を美しくしたのはアンドレだ。”

あの時 もう会えないと言ったが 
こうして何気ない会話を交わせる友人に戻れたことがフェルゼンは嬉しかった。

「さよなら オスカル あなたのドレス姿すごく きれいでしたわ。」
マリー・テレーズ王女はまだ興奮を抑えきれない様子でオスカルの手を両手で握った。
「ありがとうございます。王女さま」
「さよなら オスカル」
ルイ・ジョゼフ殿下はもう一度オスカルの頬にキスをした。
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