結婚式当日 淡いピンクの花嫁達に付き添うのは 真っ白な衣装の花婿達。
それぞれの花嫁をエスコートして 先頭の馬車に乗り込む。
オスカルの時は青だったが 今回は優しい色味のピンクのリボンを花嫁行列参加者は身に着けている。
2台目の馬車には花嫁達の付き添いの女達とル・ルーとモーリス。
3台目の馬車には盛装をしたオスカルとアンドレが乗っている。
その後をお屋敷の使用人達や友人等が徒歩で行進する。
使用人の結婚式に馬車を使うのは異例のことだが、高齢のばあやを気遣ってのことだ。
ばあやはもちろん元気ではあるが 今日は慣れない服装の上、少しだが高さのある靴も履いている。

しばらく進むと馬車が止まった。
「やれやれ」
オスカルが用意していた金貨の袋をアンドレから受け取る。
馬車を下りて前に出てみると、長い一本のピンクのリボンが道いっぱいに張られていた。
それを何人もの女達が握っている。
「わたし達の大切な ばあやさんとナタリーを渡さないわよ」
「ばあやさんとナタリーはわたし達の家族。」
「わたし達のお母さん」
彼女達はお屋敷の使用人達。もちろんこれは結婚式の慣習のひとつ。
本気で反対しているわけではない。

「おおこれは 困った どうかわたしに免じて通しておくれ」
オスカルはわざと芝居かかった言い方をしながら 金貨を女達に配った。
今日のオスカルは男性の礼装。女達の中には下働きの娘も多く
普段近づくことさえ出来ないオスカルから手渡しで金貨をもらうと それだけでぽぉっとなってしまう。

金貨を受け取った娘から順番にリボンを離して 先頭の馬車に近づき二人の新郎に
「泣かしたら 承知しないよ」
「幸せにしてあげておくれよ」
「浮気したら あたし達が黙ってないからね」
口々に言い放っていく。最後にリボンの端を持っていた娘に
「ありがとう。ばあやとナタリーのために」
そう言いながらオスカルは金貨を渡した。
真っ赤な顔でオスカルを見つめていた娘は 恥ずかしそうに俯いてリボンを巻き取り始めた。
「手が震えていますね。手伝いましょう」
オスカルの手が触れると娘はふっと倒れてしまった。
「おやおや可愛い人だ」
娘を抱きかかえるとオスカルは馬車に運んだ。

"はいはい こういうところは結婚しても変わりませんね。"

アンドレは倒れた娘の代わりにリボンの残りを巻き取りながら思った。
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