式の最初は可愛いいフラワーガールとリングベアラーが登場する。ル・ルーとモーリスだ。
オスカルの式で着るはずだったオスカルのドレスそっくりの衣裳を着て 
手にした籠から香りの良いピンクのばらの花びらを撒いてバージンロードを清めていく。
その横をモーリスが4つの指輪の乗ったリングピローを掲げて進む。
その少し後ろをばあやとアルマン、さらに後ろをナタリーとレモンが進む。
二組のカップルが祭壇に並び 司祭が開祭を宣言し、祝福を与える。

二組の新郎新婦は緊張の面もちで粛々と式を滞りなく進める。
その真摯で敬虔な姿は 若いカップルよりも清純で清らかに感じられた。
誓いの言葉を恥じらいながらも しっかりと答えていく。

いよいよ誓いの口づけをしなければならないとなった時。それぞれの新郎は狼狽えてしまった。
満場の期待の中にさらされて この年まで仕事ばかりで禄に恋愛経験を積んでこなかった
二人の男達は恥ずかしさでいっぱいになってしまったのだ。
だいいち、やっと恋人同士になったとはいえ、若い奴らのようにイチャイチャ過ごしていたわけではない。
いまさら照れくさくて そんな感じにはお互いなれなかったのだ。

花嫁も気恥ずかしいのか 俯きぎみにそっぷを向いているのでよけいやり難い。
しかし何時までもこのままというわけにはいかない。二人の新郎は互いに目くばせし頷いた。

横を向いているマロンの頬にアルマンはそっとキスをした。
はっとしたマロンが驚いた顔をして夫を見上げると
「マロンさん よろしくな」
少年のようにはにかんで囁くアルマンにマロンも
「はい・・・」
頬を染めて答えた。

レモンもナタリーの頬に誓いの口づけをしていた。こちらもはにかむばかりで 言葉も出ない。

初々しい二組のカップルを微笑んで見ていた司祭は 頃合いをはかり 祝福を与える。
指輪に聖水をかけ それぞれの新郎に渡す。

ふたりの新郎は声を合わせ
「この指輪はわたしたちの愛と忠実のしるしです。」
花嫁達はそれぞれおずおず手を差し出す。その手を優しく包みそっと指輪をはめる。
難なく入ったその指輪は暖かな光を放って ふたりを祝福しているように感じられた。

今度は新婦達が指輪を手に取る。ナタリーはそっと指輪をレモンの指にはめた。
大きな彼の手はこの日一段と逞しく優しく思えた。お揃いの指輪をそっと横に並べてみる。
どうしてだかそれだけで 幸せが胸に溢れる。

ふと 見ればばあやさん達も互いの手を揃えていた。
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