ルイはネッケルとカロンヌそれにオスカル 
ラ・ファイエット候 ロベスピエールと密かに会見を持った。

その会見で今後のおおよその方針が決められた。

まずはルイとカロンヌ氏、ネッケル氏で 原案を作る。
それをネッケル氏の意見書として国民議会にかける。
ラ・ファイエット候 ロベスピエールらがそれを後押し、議会を通過させる。
こうしてフランスを動かしていくのだ。

秘密の会見が重ねられ、 
ネッケル氏は細々当たり障りのないところから 徐々に改革し始めた。

やがて、議会に諮らなければならない問題に切り込む時が来た。
ネッケル氏の意見書が議題に上がると 皆が一斉に騒ぎ立てた。
「骨格となる憲法を作るのが先ではないか!」
「法を作るのは我々だ!
いかにネッケル氏といえど 越権行為ではないのか!」

議会は怒りに震えていた。
それを沈め 議場の雰囲気を賛成に変えなければならないのだが、
ロベスピエールにも、ラ・ファイエット候にも 声の出しようがなかった。

そんな中 ミラボーの一喝が議場を揺るがした。

「静まらんか!!!!!」

雷鳴のごとき 怒鳴り声は 議場を一瞬にして静まり返らせた。
その静けさの中、次の言葉を発しようとしたミラボーより先にタレイラン氏が声をあげた。
「わたしは ミラボー氏の意見と同様、ネッケル氏の意見を支持する。」
まだミラボー氏は賛否を表明してはいない。だが、この発言は議員達を動揺させた。
すかさずロベスピエールと彼の数人の仲間が賛成の意を示す。
「私も賛成だ!」
「私もだ!」

これに力を得て もともと 王に近しいグループであるムーニエ、トネールなどが賛成の意を示す。

議場の空気は一変した。

実は多くの議員が先日の小麦騒ぎに衝撃を受けていたのだ。
もはや、なんの実質的力を持たないはずの王が いまだ市民に絶大な人気と力があることに。

毎日 多くの時間を費やしながら 実質的なことはなにひとつ出来ていない自分達の無能さに。

結局ネッケル氏の意見書はわずかながらの修正を加えただけで承認された。
修正を加えたのは 議会の意地のようなものだ。

この最初の勝利に浮かれていたのは ラ・ファイエット候だけである。
ロベスピエールは タレイラン氏の行動に不気味なものを感じた。
さらにこの一件で恩を売ったミラボー氏が自分達の計画に
グイグイ入り込んでくるのではないかという懸念があった。

タレイラン氏は右往左往する議場を 静かに眺めていた。

"先日 スタール夫人に聞いたことは 本当なのだな"

彼女のサロンの常連である彼にこうスタール夫人は囁いたのだ。
「近々 面白いことが起こりましてよ。」
「ほぉ それはどんなことです?」
「それは言えませんわ。ああ、でも素晴らしいことですわ。」
夫人の思わせぶりな態度と 先日の小麦騒動 そしてこの意見書。

"あの カロンヌが裏で糸を引いているな。
それにしてもネッケルが彼と手を組むとは"

「本当に面白くなってきた。」
クックッと彼は笑った。

議会の承認を得て改革は本格的に動き始めた。
7月14日以来滞り気味だった 行政が活発に動きだした。
宮廷と議会をパリに移す計画も本格化し 見積もりが重ねられた。
    前へ    ダンドリBOOKの世界    次へ
inserted by FC2 system