話はテュイルリー宮に引っ越した頃に戻る。
ルイはカロンヌ氏とネッケル氏の間が落ち着き、
議会が引っ越しをしたこの機会にもう一段階踏み込んだ作戦を実行しようと考えた。
ネッケル氏の意見書に必ず間違いを一つ盛り込むことにしたのだ。
なぜなら、ルイはいずれ議会政治を本格化したいと考えていた。
しかしながら 今の議会の実力では到底 政治は出来はしない。
そのことはロベスピエールらも 否、実のところ議員の多くが実感していた。

そこでルイは まず 自分がお手本を示し、それを学んでもらおうと考えていたのだが、
ただ、正解ばかりを見せたのでは 考え学ぶことにはならない。
間違いを入れて それに気づかせることで 議会自身の自信と考える力を養おうと思ったのだ。

こうすることで この法案は議会が自ら決定したものだと思えるようにもなるだろう。
もし間違いに気が付かない時は
ロベスピエールやラ・ファイエット候が指摘することになっている。

また、ルイは議会が自発的に出した案は出来る限り尊重したいと考えていたが 
致命的に間違っている場合は 自分に残された拒否権を行使することで防いでいた。
その時は明確な理由も伝えることを忘れはしなかった。

こうして 施行される数々の政策は ベルナールらの手により 市民に伝えられた。
市民の了解を得ながら 進むことこそ 共和国への大切な一歩であるのだ。

徐々に治世の循環が上手く機能し始めた。
農地の整備が進み、外国資本と技術者を積極的に受け入れ 各地に工場がつくられた。
また港を整備し、いくつかの港を港湾利用税や関税などがかからない自由港に定めた。
フランスは国力を回復する軌道に乗り始めたのである。
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